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最近さ、朝からずっとだるいし、集中力が続かないんだよ。寝ても疲れが取れない。歳かなあ…
それ「歳のせい」で片付けるのは早いかもしれないぞ。40代以降の男性にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)——いわゆる男性更年期がある。テストステロンが下がることで、まさにその症状が出る。
男性にも更年期があるの?女性だけかと思ってた。
あるんだ。しかも女性と違って、はっきり始まる時期がないから気づかれにくい。「疲れやすい」「やる気が出ない」「イライラする」を全部性格や年齢のせいにして、何年も放置してしまう人が本当に多い。
男性更年期(LOH症候群)とは何か
LOH症候群は、正式には加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism)といいます。加齢にともなって男性ホルモン——テストステロンの分泌が低下することで、心身にさまざまな不調が現れる状態です。
女性の更年期が閉経という明確な区切りをはさんで数年間で起こるのに対し、男性のテストステロン低下はゆるやかで、はっきりした始まりがありません。だからこそ、本人も周囲も「最近つかれてるな」「性格が変わったな」で済ませてしまい、診断にたどり着かないケースが多いのです。
さらに厄介なのが、症状が「うつ病」「自律神経失調症」「単なる働きすぎ」と非常によく似ていること。実際、心療内科で抗うつ薬を処方されても改善せず、後になって泌尿器科でテストステロン低下が見つかった、という経過をたどる人もいます。
大事なのは、これは「気合いが足りない」問題じゃないってこと。ホルモンという、意志ではどうにもならない生理的な数値の話なんだ。
3つの症状カテゴリー|あなたはどれが当てはまる?
LOH症候群の症状は、大きく3つに分けられます。すべてが同時に出るとは限らず、どれか1つが強く出ることもあります。
| カテゴリー | 主な症状 |
|---|---|
| 身体症状 | 筋力の低下、体脂肪の増加(とくに内臓脂肪)、骨密度の低下、ほてり・発汗、慢性的な疲労感、関節や筋肉の痛み |
| 精神症状 | うつ傾向、意欲・やる気の低下、記憶力や集中力の低下、イライラ、不安感、睡眠障害 |
| 性機能症状 | 性欲の低下、勃起障害(ED)、朝立ち(早朝勃起)の減少・消失 |
この中で、本人がいちばん自覚しやすいのが「朝立ちの減少」です。性的な話題なので相談しにくいものですが、医学的にはテストステロン低下を疑う重要なサインとして扱われます。「疲れやすい」だけでは判断がつきませんが、そこに朝立ちの減少が加わると、可能性は一段階上がります。
また、見落とされやすいのが体型の変化です。食事量も運動量も変えていないのに、腹回りだけ脂肪がつき、腕や脚は細くなっていく。これはテストステロンが筋肉を維持し脂肪を分解する働きを持つためで、その低下がそのまま体型に現れます。
セルフチェック|AMSスコアという国際的な指標
医療機関でも使われるAMSスコア(Aging Males’ Symptoms スケール)という質問票があります。17項目の質問に5段階(1〜5点)で答え、合計点で重症度の目安を判断します。
| 合計点 | 判定の目安 |
|---|---|
| 26点以下 | 症状なし |
| 27〜36点 | 軽度 |
| 37〜49点 | 中等度 |
| 50点以上 | 重度 |
質問項目は、「総合的に調子が悪い」「関節や筋肉の痛み」「ひどい発汗」「睡眠の悩み」「よく眠くなる、しばしば疲れを感じる」「いらいらする」「神経質になった」「不安感」「体力の低下」「筋力の低下」「憂うつな気分」「絶頂期は過ぎたと感じる」「力尽きた、どん底にいると感じる」「ひげの伸びが遅くなった」「性的能力の衰え」「早朝勃起の回数の減少」「性欲の低下」といった内容です。
27点を超えたら、それだけで病気が確定するわけじゃない。ただ「一度きちんと調べる価値がある」ラインだと思っていい。ネットで「AMSスコア」と検索すれば、記入できる質問票が出てくるぞ。
ただし、このスコアはあくまで目安であり、診断そのものではありません。うつ病や甲状腺の病気、睡眠時無呼吸症候群でも似た点数になります。だからこそ、次の「検査」が重要になります。
何科に行けばいい?検査の中身と費用
受診先は「泌尿器科」が基本
男性更年期を扱う診療科は泌尿器科です。「メンズヘルス外来」「男性更年期外来」を掲げているクリニックであれば、より専門的に対応してもらえます。心療内科や内科では、テストステロンの測定自体を行っていないことがあるため、まずは泌尿器科を選ぶのが近道です。
検査は採血だけ|午前中に受けるのが鉄則
検査は基本的に血液検査です。ここで重要なのが、テストステロンは午前中に高く、午後から夕方にかけて下がるという日内変動があること。そのため、多くの医療機関では午前中(おおむね7〜11時ごろ)の採血を指定します。午後に測ると実際より低く出て、正確な評価ができません。
診断の基準値
| 測定項目 | 基準 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 総テストステロン | 250 ng/dL 未満 | 主たる診断の指標 |
| 遊離テストステロン | 7.5 pg/mL 未満 | 補助的な診断の指標。日本では重視されることが多い |
ただし、数値だけで機械的に決まるものではありません。基準値には限界があり、同じ数値でも症状の出方は人によって違います。実際の診断は、AMSスコアなどの臨床症状と血液検査の結果を合わせて総合的に判断されます。「数値が基準より少し上だから問題なし」と切り捨てられるのではなく、症状を丁寧に聞いてくれる医師を選ぶことが大切です。
あわせて、PSA(前立腺がんの指標)、肝機能、赤血球数、脂質、血糖なども測定されるのが一般的です。これは治療の可否を判断するために必要な項目です。
採血だけなら気楽だな。でも「男性更年期の検査に来ました」って言うの、ちょっと恥ずかしいかも…
泌尿器科の医師にとっては日常的な相談だ。むしろ「疲れが取れない」「やる気が出ない」で内科を何軒も回るほうが遠回りになる。
治療の選択肢|補充療法だけではない
1. 生活習慣の改善(すべての土台)
軽度であれば、生活の立て直しだけで数値と症状が改善することがあります。というより、治療を受ける場合でも生活改善は必須の土台です。詳しくは次の章で扱います。
2. テストステロン補充療法(TRT)
男性ホルモンを外から補う治療です。日本ではテストステロンエナント酸エステルの筋肉注射が中心で、125mgを2〜3週ごと、または250mgを3〜4週ごとに投与する方法が一般的です。医療機関によっては、塗り薬(軟膏・ジェル)や内服薬を用いる場合もあります。
効果を感じ始めるまでには個人差がありますが、性欲や気分の面は比較的早く、筋肉量や体脂肪の変化はより時間がかかるとされています。
3. 漢方薬・ED治療薬などの併用
症状や体質に応じて漢方薬が使われることもあります。また、勃起障害が主な悩みの場合はPDE5阻害薬(ED治療薬)が処方され、テストステロン補充と併用することで効果が高まるとされています。
◎ 治療を始める前に必ず確認されること
- PSA値と前立腺の状態(前立腺がんがある場合、補充療法は行えません)
- 乳がんの既往がないか
- 赤血球増多(多血症)のリスク
- 肝機能の状態
- 睡眠時無呼吸症候群の有無
テストステロン補充療法には明確な禁忌があります。PSAが高い方、前立腺がんや乳がんのある方は治療の対象外です。また治療開始後も、PSAや血液の状態を定期的にチェックしながら進めることが前提になります。だからこそ、自己判断でサプリメントや個人輸入のホルモン剤に手を出すのは危険です。必ず医師の管理下で行ってください。
今日から始められる|テストステロンを下げない生活5原則
テストステロンは、生活習慣の影響を強く受けます。医療機関を受診するかどうかに関わらず、次の5つは今日から取り組む価値があります。
1. 睡眠を「量」と「深さ」で確保する
テストステロンは主に睡眠中に分泌されます。睡眠時間が短いほど、翌日のテストステロン値は低くなることが知られています。まずは6〜7時間の確保。そして、いびきが大きい・日中に強い眠気があるという方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。これはテストステロンを大きく下げる要因なので、心当たりがあれば検査を受けてください。
2. 筋トレ、とくに大きい筋肉を使う
スクワット、デッドリフト、ベンチプレスのように大きな筋肉を動かす種目は、テストステロン分泌を促すとされています。週2〜3回、1回30分でも十分です。逆に、長時間の過度な有酸素運動はテストステロンを下げる方向に働くことがあるため、「走り込み一辺倒」より「筋トレ+適度な有酸素」のバランスを意識しましょう。
3. 内臓脂肪を減らす
内臓脂肪はテストステロンを女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素を多く含みます。つまりお腹が出るほどテストステロンが下がり、テストステロンが下がるほどお腹が出るという悪循環が起こります。この輪を断ち切ることが、症状改善の近道になります。
4. 亜鉛・ビタミンD・良質なタンパク質を意識する
亜鉛はテストステロンの合成に関わるミネラルで、牡蠣・赤身肉・レバー・ナッツ類に多く含まれます。ビタミンDは日光を浴びることで体内でつくられるほか、青魚やきのこ類から摂れます。極端な糖質制限や脂質制限は、かえってホルモン合成の材料を不足させるため注意が必要です。
5. 慢性的なストレスを減らす
ストレスホルモンであるコルチゾールは、テストステロンと逆の関係にあります。長時間労働や過度な緊張が続くと、テストステロンは下がります。「がんばって乗り切る」という発想そのものが症状を悪化させるという点は、まじめな人ほど意識しておきたいところです。
◎ 逆に、テストステロンを下げてしまう習慣
- 慢性的な睡眠不足(6時間未満が続く)
- 過度な飲酒
- 内臓脂肪の蓄積
- 極端な食事制限・長時間の空腹
- 長時間の激しい有酸素運動のみ
- 慢性的なストレスと休息不足
周囲の人が気づけるサイン
本人は「歳のせい」と思い込みがちなので、家族やパートナーが気づくことも少なくありません。次のような変化が続いている場合は、受診を勧めてみてください。
- 休日にずっと寝ている、外出を面倒がるようになった
- 些細なことで怒りっぽくなった、逆に無気力になった
- 趣味に興味を示さなくなった
- お腹まわりだけ急に太ってきた
- 「もう歳だから」が口癖になった
責める言い方じゃなく、「一度だけ血液検査を受けてみたら?」と提案するのがコツだ。数値が出れば、本人も納得しやすい。
よくある質問
Q. 男性更年期は何歳ごろから始まりますか?
A. 一般に40代以降で症状が現れやすくなりますが、テストステロンの低下は20代後半から徐々に始まっています。30代で症状が出る人もいれば、60代でほとんど自覚がない人もいます。年齢よりも、症状と数値で判断するものだと考えてください。
Q. うつ病との違いはどう見分けますか?
A. 自己判断で見分けるのは困難です。実際に症状は非常に似ています。ひとつの手がかりとして、性機能症状(性欲低下・朝立ちの減少)が同時にあるかどうかがあります。ただし確定には血液検査が必要です。心療内科の治療で改善しない場合は、一度泌尿器科でテストステロンを測ることをおすすめします。
Q. 検査費用はどれくらいかかりますか?
A. 保険適用となる場合と自費になる場合があり、医療機関によって扱いが異なります。受診前に電話で「男性更年期の検査を希望している」と伝え、費用の目安を確認しておくと安心です。
Q. 市販のテストステロンサプリメントは効きますか?
A. 亜鉛やビタミンDなど、ホルモン合成を支える栄養素の補給には意味があります。ただしサプリメントでテストステロンそのものを大きく上げることは期待できません。また、個人輸入のホルモン剤は、前立腺への影響や多血症のリスクを検査なしで使うことになり、非常に危険です。必ず医療機関を通してください。
Q. 治療はずっと続ける必要がありますか?
A. 症状と数値の改善度合いによります。生活習慣の改善で数値が安定し、補充療法を減らせるケースもあります。医師と相談しながら継続の可否を判断していくことになります。
まとめ|「歳のせい」で片づける前に、一度数値を見る
男性更年期(LOH症候群)でいちばん多い失敗は、症状を性格や年齢のせいにして、何年も放置してしまうことです。疲れやすさ、意欲の低下、イライラ、体型の変化、性機能の変化——これらが重なっているなら、それは意志の問題ではなく、測れる数値の問題かもしれません。
手順はシンプルです。①AMSスコアでセルフチェックする → ②27点以上なら泌尿器科を予約する → ③午前中に採血を受ける → ④結果を見て医師と方針を決める。ここまでで、必要なのは半日程度です。
そして、受診するかどうかに関わらず、睡眠・筋トレ・内臓脂肪・栄養・ストレスの5つは今日から着手できます。40代からの体調管理は、根性ではなく仕組みで整えるもの。数値を見ることは、その第一歩です。
「歳だから仕方ない」で終わらせなくていいんだな。まずAMSスコアをやってみるよ。
それでいい。もし点数が高かったら、次の休みに泌尿器科を予約する。それだけで人生の後半戦のコンディションが変わることもある。
※本記事は一般的な医学情報の紹介であり、診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。



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